アルミハウスプロジェクト

「SUS・アルミハウスの構築された姿」— その1

「SUS・アルミハウスの構築された姿」— その1

今回の特別連載から2回にわたり、これまでのアルミハウスプロジェクト・ストーリーをまとめるとともに、アルミハウスの開発成果を報告します。
今回はアルミハウスの目指すものを記します。

2010年代初めの住宅供給を巡る環境

アルミフレーム・システム住宅(1971年)古河アルミニウム工業
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アルミフレーム・システム住宅(1971年)古河アルミニウム工業

※写真提供:アルミニウム建築構造協

 一昨年、昨年の住宅着工戸数は、31年ぶりに100万戸を割り、80万戸前後となっています。これは、景気後退の影響もありますが、1990(平成2)年、170万戸超をピークとする住宅供給の縮少傾向によると言えます。戦後の住宅不足420万戸の解消から、68(昭和43)年に住宅戸数が世帯数を上回り、73年に全都道府県においても、そして88年には非居住住宅を除く住宅戸数が世帯数を上回り、住宅の量的充足がなされました。最近の住宅供給(連載第2回「戦後の住宅政策」に学ぶecoms 26号に詳述)には、「量の確保から質の向上へ」という大きな変革が起きています。 
 この状況下、住宅政策も、40年にも及ぶ「住宅建設計画法、住宅建設五箇年計画」から06年に「住生活基本法、住生活十箇年計画」へと転換しました。21世紀の目標は「よいもの(住宅)をつくってきちんと手入れをして大切に長く使う」ことです。住宅建設には、100年、200年住宅と言われるがごとく長期耐用性や環境との共生からの省エネルギー、省資源化、そして長寿社会への対応としてのバリアフリー化などが求められます。加えて、住宅の隣接、周辺環境としては、良好な住環境の形成、少子高齢化社会を支える居住環境の整備、はたまた阪神・淡路大震災の影響から安全で快適な都市居住も唱われています。さらに、2011年3月の、東日本大震災、原子力発電所の事故によって、建築学の総合的な考察を待たなければなりませんが、住宅に関して、防災・安全はもとより、エネルギーの地産地消の観点からエネルギーの自立も提起されています。

アルミニウム産業に、よるアルミハウスへの挑戦

 戦後の住宅供給において、アルミニウム産業によるアルミハウスへの挑戦は3回ありました(連載第3回 “アルミニウム産業によるアルミハウスへの挑戦”ecoms 27に詳述)。初めての挑戦は、戦後間もなく、「軍需産業」であった戦前のアルミ産業から「平和産業」への転換の象徴として発表された、星野昌一氏などの指導によるものを含めた3種のアルミ住宅の試作です。戦災での住宅不足に対するアルミ産業の工業生産力の活用を図ったわけですが、あくまで実験住宅で終わりました。
 次の挑戦は、高度成長の絶頂期、住宅着工戸数が100万戸を超え最高戸数190万戸となった時代です。現在のプレファブ住宅メーカーが昭和30年代から住宅産業に参入し、ほぼ出揃った頃から、日本軽金属をはじめとする5つのアルミ企業とそのグループが、プレファブ住宅を手本としてさまざまな構法、用途のアルミ住宅を開発、供給し始めます。アルミの建築用途が住宅のサッシ、ビルのカーテンウォールから、ほかのものに広がった昭和30年代に引続き、アルミ産業は、ポストサッシとして建築用途のさらなる拡大を狙いました。しかし、これも、73年の第1次、79年の第2次オイルショックによって挫折し、アルミハウスは忘れ去られます。
 3回目の挑戦は、新しい年号の平成に、アルミ業界が陸運用途のみに期待するだけでなく土木建築用途の拡大を図り、アルミニウム建築構造推進協議会を組織することから始まります。02年5月の「アルミニウム合金造の建築物等の構造方法に関する安全上必要な技術基準」が国土交通省から告示され、アルミ業界の長年の悲願が現実になりました。その後、アルミ建築、アルミ住宅は、さまざまな建築家の試みとして主に展開していきます。また、アルミニウム建築構造協議会では、08年から「アルミハイブリッドハウス」3カ年事業に取り組み、2011年3月に報告書をまとめました。
 ご存知のように、SUSも、03年5月にecoms hallの完成を皮切りに、建築家への部材供給、建築家との協働による建築システムの開発にも取り組み、アルミ建築を数多く実現してきました。05年9月には初のオールアルミ住宅・静岡M邸を完成させました。

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    静岡M 邸

アルミハウスへの挑戦;「三度目の正直」を目指して!

 アルミ産業は、アルミハウスへの挑戦を通して、1度目から3度目まで、そして現在も、アルミの特性と「工場生産」「量産化」による高品質で、メンテナンスフリーのアルミの住宅、別荘を実現するために、試行錯誤を繰り返しています。しかし、戦後間もなくの1度目と昭和40年代後半の2度目の挑戦は「量の確保」時代にあり、その多くが、住宅としての質より、施工の合理化、効率化による建設戸数の増加を求めました。また、アルミ産業における供給サイドの目論見がまずあり、つくり手の都合が強すぎました。
 しかし、「質の向上」時代の3度目の挑戦では、新たな建築構法のアルミハウスも、より高品質な住宅であることを求められます。21世紀は、循環型社会、ストック型社会や少子高齢化社会、そしてCO2排出抑制・地球温暖化や省資源・省エネルギー問題の社会、時代であり、住宅産業だけでなく、すべての産業は、新しい生産システム、製品の開発を急ぎ、構造変革を迫られています。これまでの試行錯誤の延長上にあるアルミハウスは、循環型社会、ストック型社会などへの解答の1つである可能性を持つと言えます。3度目のアルミ産業におけるアルミハウスへの挑戦は、今日であるがゆえに「二度あることは三度」ではなく「三度目の正直」になるかもしれません。
 3度のアルミハウスへの挑戦において蓄積された挑戦者たちのアルミハウスへの情熱、知恵から学ぶとともに、アルミ建築を手掛けて6年間あまりで蓄えた経験や技術を踏まえ、SUSのアルミハウスプロジェクトの基本方針は、アルミの特性や人工素材としての特徴を充分に活かすために、次の5項目としました。※

①アルミハウスを構成するすべてのフレーム、パーツ類は標準設計されたものであり、工場で生産されたものが基本となる。組立作業は、常に最短となることを目指す。
②負荷重量、スパン、使用環境などの建築条件、および使用環境などの設計諸条件によって、ラインアップされたフレームの種類や締結システムの中から選択する。
③アルミフレームやブレース材、パネル材および締結金具で構成されるユニットが基本となり、各用途や機能に応じて必要なパーツを選び、フレームに付加する。
④フレームを組み上げたスケルトン構造が基本となるが、外部環境に対応するための環境システムや材料、機器類にも設計対応した構造とし、居住性を満足させる。
⑤アルミハウスは耐久性の高い素材やパーツ類で構成され、土工事を除きすべて組立作業を基本とする。移設も短時間で解体され、すべての部品は再利用され再組立できることを基本とする。

SUS・アルミハウスは、「パーツを複合化してユニット化を進め構成要素の数を極力抑え、すべての作業は事前に用意され、現場合わせの仕事は一切なく、アルミ押出材をベースとして組み立てる巨大な住宅機械装置」です。


※ecoms26号P1~2「アルミハウスの定義」

SUSのアルミハウスはアルミ・ハウスである。

 SUSはアルミハウスを、次のように定義します。
第1の要件…主要構造材はアルミ材であること
第2の要件…住宅全体がプレファブリケートシステムで構築されていること
第3の要件…スケルトン・インフィル構想であること
第4の要件…リユース、リサイクルを前提としたアルミ複合部材で構成されていること
第5の要件…自然環境に配慮しなければならないこと
第6の要件…オートメーション化を図ること
これらが前項で述べた現在における時代、社会からの要請にどのように応えているかは、表︲3となります。ここにはアルミであるがゆえの解答があり、アルミの持つ特性(表-2を参照)が活かされるだけではなく、アルミの加工技術も活かされています。
 SUSのアルミハウスは、根本に戻り、アルミの弱点、例えばヒートブリッジなどを補い解消し、住宅としての機能も満足させることを目指します。さらに、巨大な住宅機械装置として、機械的に組立、増設組立、短時間で解体、そして全体的にも、あるいは、部分的にも再利用され再組立される、すなわち、これは建築での増改築、移築です。さらに、アルミの高い精度からアルミハウスに「動く」ことを採用することで、住機能、住空間をより豊かにできます。
 SUSのアルミハウスは、アルミ造(どこまでアルミでつくられているかは別に)のハウスを超え、アルミ、ハウス(住宅)それぞれの特性、機能が際立った「アルミ+×(加・乗)ハウス」であり、新たなる居住空間、居住スタイルを創造します。そして、アルミハウスを100年以上耐える仕様で建設し、住宅を耐久消費財から資本財へ転換し、フローからストックへによって、これからの日本にふさわしい街づくりに貢献することを目指します。

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    表-2 :アルミニウムの特性(アルミニウム協会資料より)

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    表-3 :SUS・アルミハウスにおける現在の時代、社会の要請への解答