ココスガーデン4
アルミオリジナルの構造形式ラチスパネル
SUS九州事業所のエコムスファクトリーとエコムスハウスに使われ、仕上げがいらず、そのまま外装材としても内装材としても使え、さらには柱のない広い空間をつくることができ、縁起のよい千鳥格子の模様を持つラチスパネル。これはいったいどのような経緯で生まれたのでしょうか。
エコムスホールの評価に飽き足らない思いが開発の原点
2002年にアルミが建築の構造材として認定を受けて、初めて実現した建物がエコムスホールです。手がけたのはやはりSUS。日本アルミニウム協会賞を受賞するなど高い評価を受けた建物ですが、SUSはその結果に満足していませんでした。それは、エコムスホールが柱梁のラーメン構造だったからです。柱と梁のジョイント方法などにアルミ押出材ならではのアイデアが盛り込まれていたものの、鉄骨造をアルミに置き換えただけなのではないかという思いをぬぐいきれませんでした。アルミならではの構造形式、つまり、柱梁のラーメン構造でもなく、壁式構造でもない、アルミらしいシステマティックな構造形式はないだろうか、そんな思いから新しい構造形式の開発はスタートしたのです。
アルミ建築ならではのシステムを模索
このような時期に、建築界を沸かせたのが、建築家・山本理顕さんが応募し1等を勝ち取った群馬県邑楽町(おうらまち)役場庁舎のコンペ案です。これには1辺750mmのキューブを9つ合わせた1辺2250mmの大きさのユニットを基本単位とするシステムが採用されています。ユニットを形づくるのは5センチ角の非常に細いスティールの角パイプ。施工方法に関しても簡便化を目指して、鉄骨運搬用の金属バンドでストラップする方法を採っています。これであれば締め付け機械を利用して、30秒でフレームを一体化することが可能ですし、解体、リサイクルも容易です。おりしもSUSは、佐賀県鳥栖市に九州事業所を建設しようとしていた矢先。工場の建物を、アルミで、しかもアルミならではのシステムでできないかという検討を始めていました。邑楽町役場の建築システムに興味を持ったSUSは、山本理顕さんに共同開発を持ちかけることになったのです。
押出材の小口をデザイン
アルミで建築を手がけたことのない山本理顕さんでしたがSUSの工場を訪問するなどしてアルミの理解に努めていただきました。その結果、何回目かの打ち合わせで提示されたのが、このラチスパネルの原型ともいうべきものでした。白板に描かれたその内容を見て、同席した関係者は一様にはっとしたといいます。それが今までに見たこともないアルミ押出材の使い方だったからです。具体的には押出断面の小口を見せる、しかも単に見せるのではなく、デザインとして見せる案であることに驚かされたのです。しかも、そのデザインは千鳥格子、あるいはたすき掛けといわれる伝統的な模様。土蔵に用いられるなまこ壁をも想起させます。構造材としてのみならず、意匠材として使うこともできる画期的なパネルでした。
押出材の結合方式はアルミならではの嵌合に
この原案を元にパネルの開発は進められることになりました。開発を進めるにあたっては、当時、SUSの開発部門を率いていた宗像剛・元常務や、建築構造家・飯嶋俊比古さんが尽力したと聞いています。具体的には、押出材と押出材をどのように結合するかが大きな問題となりました。さまざまな接合方法が試される中、なるべく簡便で、しかも構造的に満足できる強度を保ち、さらに意匠的にもスレンダーで美しいものをということで試行錯誤が繰り返され、嵌合(かんごう・はめあい)と呼ばれる方法が採用されることになりました。こうしてアルミ押出材を連結・積層させるというまったく新しいアルミ構造材が誕生したのです。