いまを生きるアルミ建築

ココスガーデン3
アルミの可能性に夢を託す

ココスガーデン3
アルミの可能性に夢を託す

竣工時のココスガーデン(外観)

2017年初秋、初めて目にするこのアルミ建築を、向かいの東公園の木々越しに撮影しようとカメラを構えて驚きました。露出があわないのです。アルミの外壁の明るさに露出を合わせようとすると、公園の木々が真っ暗につぶれてしまいます。かといって木々の自然な表情を表そうとすると、外壁は“飛んで”しまい、アルミの質感が表現できなくなってしまうのです。この12月には竣工後13年を迎えるこの建物が、なぜこんなに明るいのだろう。そんな疑問と驚きが、ココスガーデンから受けた第一印象でした。

ラチスパネル民間第1号建築

 ココスガーデンは、JR博多駅の1つ隣あるJR吉塚駅から歩いて1分、駅前通りに面した場所に建つフラワーショップです。竣工は2004年12月。アルミ建築・アルミ家具の製造・販売を手がけるSUS株式会社(以下、SUS)によって建設されました。ラチスパネルというアルミならではのシステムを採用した民間第1号の建築で、1階はフラワーショップ、2階は美容院などを想定した貸し店舗として計画されました。竣工後13年経つ今も1階はフラワーショップとして使われています。経営されるのは、この建物の建設を進められたクライアントの吉原春海さんのご長男である春造さん。2階では次男の直樹さんが、かばんや袋などの繊維製品製造を手がけるマルア株式会社を営んでいます。

建築に対する強いこだわり

 木でもなく鉄でもコンクリートでもなくアルミという素材を使って建築をつくった理由は何だったのでしょうか。春海さんは、ご家族や従業員の方にあまり相談せず、独断で話を進めていたので詳しいことはわからないといいますが、「建築に対する強いこだわり」が背景にあったのではないかというのが、春造さんと直樹さんの共通する認識です。ここに建物をつくろうと決めてから4年間にわたり、6つの計画が他社より提案されましたが、そのいずれにも春海さんは納得できませんでした。

アルミには可能性がある

 そんな折、たまたま佐賀県鳥栖市を訪れた春海さんは、シルバーに輝く不思議な建物を発見します。それがSUS九州事業所の建物でした。ラチスパネルの開発に成功したSUSがまずは自社の建物にこのシステムを採用しようと2004年6月に完成させたのが、この九州事業所の工場であるエコムスファクトリーとモデルハウスであるエコムスハウスです。思わず立ち寄って、この建物について話を聞いた春海さんは、以前、繊維業界で働いていたときにYKKの経営者から聞いた「アルミには可能性がある」という言葉を思い出さずにはいられませんでした。自身も仕事を通してファスナーなどアルミ製品を扱うことの多かった春海さんは、これ以降、急速にアルミ建築にひきつけられていくのです。

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    SUS九州事業所 エコムスハウス

アルミ千鳥格子

 この訪問の際に春海さんと直接話をしたのは、当時、SUS九州事業所の所長をしていた村本増美さんです。村本さんは、春海さんよりフラワーショップの建設計画があることを聞き、ぜひともエコムスハウスやエコムスファクトリー同様、ラチスパネルを使ってフラワーショップを建てたいと考えました。一方の春海さんも、ラチスパネルがつくり出す千鳥格子の模様に大変魅力を感じたといいます。千鳥格子は、厄落としの意味もある縁起がよい図柄。店舗デザインにうってつけだと感じたそうです。加えて、仕上げがいらず、そのまま外装材としても内装材としても使える点、さらには柱のない広い空間がつくれる点にも大いに魅力を感じたとのことでした。

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    SUS九州事業所 エコムスファクトリー