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エコムスファクトリー完成

エコムスファクトリー完成

平成16年6月18日、エコムスファクトリー『九州事業所鳥栖工場棟』は、壁一面を覆うガラスの中から銀色に輝くたすきがけの紋様を描き出し、その姿を現しました。『軽くて強い、しかも環境にやさしいアルミの建材としての可能性を追求した建物を』と進めれられたこのプロジェクト。今後は、一般普及のために簡便な施工方法の確立やさらなる軽量化、コストダウンなどの解決に取り組んでいきます。

エコムスファクトリー構造設計の観点から

1.はじめに

 SUS九州工場(鳥栖)のエコムスファクトリーは、アルミニウム合金による立体トラス構造を除けば、現時点において国内最大のアルミ建築となります。この構造について簡単に説明いたします。
 エコムスファクトリーはエコムスハウスの構造システムを用いています。エコムスハウスは、その名前のとおり住宅ですから、その構造も住宅規模を対象にした構造システムになっています。構造システムの基本的な考えは既に紹介されていますので、ここでは割愛いたします。エコムスファクトリーは事務所と工場が一体となった建物ですので、大きさも住宅規模を超えています。従いまして、エコムスハウスの構造システムを用いてエコムスファクトリーを作るためには、システムの拡張が必要になります。

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8mm×200mmのたて枠(ラチスパネルより内側に出ている部分)

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高さ1,200mmの梁

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工場部分を3分割しているラチスパネル

2.構造のテーマ

 エコムスファクトリーの平面は、12.0m×43.2mであり、事務所として使用する2階建て部分12.0m×10.8mと、工場として使用する平屋部分12.0m×32.4mで構成されています。
事務所の2階建て部分は、基本的にショールームと同じ規模となっていますが、工場部分は、階高が6.0mと高く、スパンも12.0mと大きいのが特徴です。構造設計においてこれらをどのように実現するかがテーマとなります。

①外壁のたて枠について
 外壁のたて枠(ラチスパネルのたて枠)は、風に対して発生する応力度が許容応力度以下であること、また、有害な変形が生じないことが設計条件になります。たて枠の板厚は、構造の要件から既に8mmと決まっています。この寸法は、納まりの関係から変更することができません。そこで、ここでは高さ3.6mの外壁のたて枠寸法を8mm×120mmとしているのに対し、8mm×200mmとして必要な曲げ剛性を確保しました。

②梁について
 梁もたて枠と同様に、応力度と変形を規定内に納めなければなりません。梁の耐力と剛性は、梁の高さとフランジの断面積で決まります。ここでは、ショールームの梁がラチス1ユニットを用いて梁の高さを300mmとしているのに対し、ラチス4ユニットを用い、梁の高さを1,200mmとし、適切なフランジ厚さを定め対処しました。

③屋根面の剛性
 工場部分の12.0m×32.4mを完全に無柱空間とするためには、32.4mの外壁に作用する風荷重を、屋根を介して両側のラチスパネルに伝達する必要があります。これを実現するためには、ショールームで用いた屋根システムよりも大きな耐力と剛性が必要となります。ここではそれを避け、ショールームと同じ屋根システムを用いるために、32.4mをラチスパネルを用いて10.8mの3分割にしました。こうすることにより、屋根面の負担を軽減しています。

3.おわりに

 エコムスハウスの構造システムは、住宅を対象としていますが、部材を適切に選択することにより、より大きな規模の建築を実現できるシステムであることが実証されたと考えています。

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    事務所部と工場部を仕切るラチスパネル

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